展覧会004 ねこの目とんぼの眼

8月の展覧会の作品004『ねこの目とんぼの眼』

オリジナルの格子模様「田反」と「a cross prayers field」の元になっているはスコティッシュ・タータンです。

スコティッシュ・タータンの面白さを、私なりに解釈したのは

「遠景としては、風景の一部の色としてあり」

「中景としては、アイデンティティを表し」

「近景にあっては、その人物のパーソナリティを表現する」

という「遠景」「中景」「近景」の空間的広がりの中で、その在り方(存在形式)が変化するという性質が大変面白く感じられました。


2023年2月頃に鶴見和子と武者小路公秀の対談を収録した本「複数の東洋 複数の西洋」(鶴見和子・対話まんだらシリーズ)などを楽しく読みました。その中で、鶴見は、日本では「アイデンティティ」という言葉をその本来の意味の一部分した輸入しなかったという趣旨のことを述べています。それを読むまで、私も「アイデンティティ」とは「自己同一性」であり、「個々の違い・差異」について表現する単語だと思っていました。鶴見は逆に「何に属しているのか」という視点が欠落していると指摘しています。つまり「アイデンティティ」とは「個」であり「群」でもあるという人の在り方の多面的な要素そ総合的に包含する観念だということです。

2000年頃に読んだある本、カルチャル・スタディーズ関連の本を読んだ際に、欧州人がアイデンティティについて何を言いたいのかが全く分からず、以来「?」のままだったのが、鶴見の本との出会いで、「アイデンティティ」という語の本来の意味の全体像が理解できたように感じました。

スコティッシュ・タータンはまさにその「アイデンティティとはなんぞや」ということを造形的に表現する媒体(メディア)のような印象で受け止めたのでした。

その私の解釈を、再度、自分の表現として制作したのがこの作品です。

ARTE STILO

現代美術の作家、太田武志が2024年から作り始めた「ARTE STILO」のシリーズを中心に作品やその背後にあるアート・コンセプトを紹介するサイト。

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